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第6回「福井フルクサス」
放送日:2006年11月11日
出演:靉嘔、塩見允枝子、ベン・パターソン、ユーゲン・オルブリッヒ(フルクサス・アーティスト) ほか
演出:狩野喜彦
制作:テレコムスタッフ
1960年代初頭世界各地で同時に巻き起こった前衛芸術運動「フルクサス」の代表的アーティスト、靉嘔。2006年3月福井県立美術館で催された靉嘔の回顧展に合わせ、フルクサスのライブイベントが開催された。
1960年代、リトアニア人デザイナー、ジョージ・マチューナスは、世界中から集まったアーティストたちによって、前衛芸術集団フルクサスを組織した。コンセプトが指示されたスコアを元に行なわれるパフォーマンス。今、30年以上の時を隔てて、かつてのパフォーマンスが上演される。
『Funniest is best』
『happening/ハプニング』という言葉がある。これは広辞苑によれば「思いがけなく起る出来事」とあるが、この言葉が使われ始めたのは、1959年アメリカの思想家であり芸術家であったアラン・カプローがニューヨークに於いて、従来の美術の枠ではとらえられない行為(パフォーマンス)を媒介にして、行為者と観客によって同時に創られる、新しい芸術表現をハプニングと名付け、提唱したことからだった。日本では『行動芸術』と訳されたこともあった。そしてこの言葉は流行語のように人口に膾炙し、突発的な、常識的理解を超えた出来事全般をそう呼ぶようになった。
そしてこの時代、アラン・カプローは「フルクサス」のメンバーであり、日本人アーティスト靉嘔とも親交が深く、靉嘔もまた、この新しい芸術表現の先端にその身を置いていたのだった。
当時の「フルクサス」は、ヨーゼフ・ボイス、ベン・ヴォーティエ、ナムジュン・パイク、エメット・ウィリアムス、ラ・モンテ・ヤングといった錚々たる芸術家が名を連ね、日本からも靉嘔はもとより、塩見允枝子、オノ・ヨーコ、斉藤陽子、刀根康尚といった人々が参加していた。そして「フルクサス」ではこの『行為による新しい芸術表現』をイヴェントと呼び、一度限りの「ハプニング」を発展させ、何度でも、誰でもが演じられるように、コンセプトを記したスコアを残した。今回の「福井フルクサス」はこのスコアをもとに、上演されたものである。
北陸の地方都市で、2日間に渡って演じられた20を超すイヴェント。目の前で繰り広げられる「日常を創造的な眼差しで見直す。専門家と一般人の上下関係の否定。ユーモアへの偏愛」をコンセプトにしたイヴェントに、観衆は多少戸惑いながらも笑いを浮かべ、その世界に引き込まれていった。
「えっ、これが前衛芸術?」「芸術じゃなくて見せ物じゃないの?」「何を意味しているんだ?」「一体、芸術って何だ?」そんな疑問を抱く人もいたかもしれないが、ここでは、観衆がそんな疑問を抱くことも芸術の一部であり、その行為こそが芸術に参加している証なのである。
「The funniest is best. 面白ければそれでいいんですよ」イヴェント終了後、靉嘔はそう言って、顔いっぱいに笑いを浮かべた。
18世紀の哲学者カントは、芸術に対して「戯れ」という言葉を使った。第一次大戦直後ダダイストたちは、物質文明が戦争をもたらしたという反省から、一切の合理性を排し、衝動的な行為によって現代文明を批判・破壊を試みた。そして第2次大戦後、マルセル・デュシャンはその作品で芸術と非芸術のヒエラルキーを揺るがした。そしてそれから半世紀以上の時が流れ、21世紀を向かえた今、芸術は何処へ行こうとしているのか…。この日上演された「フルクサス」のイヴェントは、そんな問いに、一つの指標を与えてくれるのではないだろうか。
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